うちで読んだ絵本たち

デザイン会社に勤務する母が娘に読んだ絵本のログと、うちの子の好き度などをまとめていきます。

011:切なさの中にも希望がある「アンジュール」

アンジュール―ある犬の物語

アンジュール―ある犬の物語

一切文字がない、絵のみの絵本。 1匹の犬が捨てられて行先を求めて彷徨う話(という解釈)。 ーーー - 世界観・雰囲気 前編絵のみで、その絵も鉛筆のみで描かれているためモノトーン。 ページの雰囲気によってダイナミックに線が走っていたり、鉛筆のみでグラデーションが表現されていたりと、様々な表情がある。 捨てられた犬の切なさや哀愁の声が聞こえてきそうなほど、鉛筆だけで展開されているとは思えない表現力がある。

特徴 うさこちゃんシリーズでもテキストのないものがあったりするけど、私が出会った絵本で文字がない本はこれが初めてだった。 主人公が犬、ということで、現実世界でも発話をしない対象だからこそ、テキストがない中での表現がリアルに感じ取れる。 犬の感情も、その表情や空気からとても良く読み取れ、テキストがなくてもしっかりと物語が成立している。

  • 1ページの文字量 なし

  • 音読目安 どう読むかによる。 親が想像でストーリーをつけて話してあげるスタイルにするなら、3分~5分くらい。 パラパラと絵をめくるだけなら多分1~2分くらい。

  • ムスメに読んでいた時期 2歳

  • ムスメ好き度(星5中)

  • 母好き度(星5中) ★★★★★ ーーー 娘好き度が低いのは、娘は犬に感情移入しすぎて犬が可愛そうなのか、自分を投影して寂しくなるのかのどちらかだとは思うが、 この本を読んだ後にとても寂しそうな表情で泣いてしまったため。 まだ両親との距離感が近い年齢だとこういう影響が出るのか、と親としても新発見。

ちなみにこの本は母である私が独身時代に出会ってコレクションしていた本のうちの1冊。 どのシーンも、余白のとり方や犬の表情、ページの持つストーリー性が素晴らしいく、とても気に入って買った。

テキストがない、ということは、どういう解釈も読者次第。 冒頭で1台の車が登場し、そこから犬が投げ捨てられる(文に起こすととても重いな…)のだが、それを「犬がきっと悪いことしちゃって飼い主を怒らせちゃったんだよ」とするのか、「飼い主は犬のことがどうしても好きになれなかったんじゃないかな?」とするのか、はたまた「きっと引っ越し先のおうちでは犬は買えなくなっちゃったのかな」とするのかは読者の自由。 様々な想像が全て肯定される(…というのが正しいのかはわからないが、少なくとも読者に委ねられてはいる)ので、こういうところで想像力を養ってほしいと思うので、娘とも長く付き合ってほしいな、と思う1冊です。

[コラム]我が家の絵本の迎え方

絵本10冊レビューしたらコラムを挟む、というのをやってみようかなと。

今回はタイトルの通り、我が家に来る絵本たちは何で入手されるか、というお話。

代表的なところは多い順に以下。

  1. 絵本定期購入
  2. 本屋で購入
  3. いただく(プレゼントやおさがりなど)

いただくに関しては全く視点が含まれないので除外して、それ以外の「定期購入」と「本屋で購入」の2点を紹介してみようかと。

  • 定期購入

これは保育園の年度切り替え時に案内があって、園に申し込み書を渡すと園経由で毎月渡されるというもの。
基本的には案内には年齢別に定期コースが書かれており、その中からコースを選んで申し込む形で、福音館書店のものだけが対象(だったと思う)。
福音館書店はこれまでも数々の名作、定番、新刊を生み出してきている出版社で、絵本の方向性も割とストーリーも世界観もクオリティが高いものが多いので信用しているというのがあって迷わず申し込んだ。
去年、今年と2コースずつ申し込んでいるが、通常書店ではハードカバーで売られるものがソフトカバーで、通常版より一回り小さいため1冊500円以下くらいの破格の安さである。
普段自分が書店に出向いたら手にも取らなそうな本に出会えたりするのと、何より保育園から絵本を受け取り時にムスメに渡されるので、ムスメが帰って読むのをとても楽しみにしているというところがとても良い。
一点だけ、難しいなと感じているのが対象年齢。うちのムスメは絵本好きなほうだと思うので、そこそこの長さのものでもじっとして聞いていることができる。
理解できているかは別として、対象年齢コースで買うと、短くテンポの良い作品が多くなる傾向なので、そこが柔軟に動かせないの難しい。

  • 書店で購入

上記の定期購入で届くものがある前提で、もっとこういうのが欲しいな、とか、気になる絵本があった場合は書店で追加購入する。
多分月に2〜3冊くらい。
書店での選び方は、出版しばりとか作者縛りはあまりない。
世界観、絵のトーン、テンション、ストーリー(特にオチ)、長さや文の多さ、ムスメが楽しめそうか、辺りが選定ポイント。
特に気をつけるのは、ストーリーが説教くさくないこと。もちろん生活習慣につなげられる効果がある絵本などもあるけど、それを本が押し付けるのは違うんじゃないかな、というのは自分が大事にしてる観点のひとつにある。

定期購入は課題はあるものの、価格に対して得るものは大きいので恐らく見合うコースがなくなった、とかがない限りは続けようと思う。
書店購入はあまり事前の情報収集せずにふらりと足を運ぶことが多いが、先日何気なしに買った「クリエイターオススメの絵本」がとても良かったので、最近はそれを参考にしている。

ここまでの特集性はないものの、このブログも誰かの何かのきっかけになれたら嬉しいなぁ。

010:スキンシップしながら「きゅっきゅっきゅっ」

「おつきさまこんばんわ」の林明子さん作。
子供とぬいぐるみの動物たちが一緒にご飯を食べて、溢れたものを子供が拭いてあげる、というストーリー。
ーーー

  • 世界観・雰囲気

ピンク、茶、オレンジ、薄オレンジ、緑、白、黒の7色のみでイラストが展開される。ピンク、茶、オレンジ、薄オレンジは同じ暖色系なので、白、緑が際立つ配色なはずだけど、絵柄の中ではきちんとこぼれるスープを表す茶色にちゃんと目が行く構図になっているのはさすが。
「おつきさまこんばんわ」も限られた配色だったけど、コントラスト高めで深い青と月の黄色だったので単色感はあまり感じなかった。
「きゅっきゅっきゅっ」は色展開は多いけど、近似色でまとめられているので、「おつきさまこんばんわ」よりも単色感が強い。

  • 装丁

ハードカバー

  • 特徴

子供のおままごとのような設定で、子供目線と第三者視点が入り混じりながら話される。
ぬいぐるみの動物たちは、ただいるだけでもなく、過度な主張もないが、命は感じる。
主観/客観、リアル/フィクションが絶妙に組み合わされている。

  • 1ページの文字量

10〜20文字程度

  • 音読目安

1分〜2分程度

  • ムスメに読んでいた時期

1歳〜2歳

  • ムスメ好き度(星5中)

★★★★★

  • 母好き度(星5中)

★★★
ーーー
娘に読むときは「おにぎり」同様、娘の手や足にスープをこぼした仮定で拭いてあげながら読んでいるためか、ケラケラ笑いながら楽しんでいる。
なので、どちらかというとこの絵本が気に入っているというよりも「ふきふきして〜!」と持ってくる。
擬音繰り返しにまで寄せすぎず、きちんとストーリーがあって、単調ながらも展開が見られるので母としてもあかちゃん向け絵本の中では好きなほうに入るかなー。

…とか偉そうに言っておきながら、自分がもし作家でストーリーを考えようとしたら多分、主観/客観とリアル/フィクションの揺れの整合性がつかなくてこんなにうまくストーリーにまとめられないと思うから、そこは作家さんの力だなと思う。

009:読んでると食べたくなる「おにぎり」

おにぎり (幼児絵本シリーズ)

おにぎり (幼児絵本シリーズ)

友人が娘にプレゼントしてくれた絵本。絵がとても写実的。炊き上がったホカホカのご飯でおにぎりを作っていく工程が描かれている。
平山さんの本との出会いはこれが最初だったけど、うちには今は「いちご」もあります。
ーーー

  • 世界観・雰囲気

柔らかいタッチ、輪郭淡めで描かれるリアルな「おにぎり」。シズル感満載で温かいおにぎりが食べたくなる。ご飯がアツアツなので、ご飯を握った手はじんわりと赤みがかかるなど、細かいところまでリアルで、単に「リアルなタッチで描かれている」わけではない。細かな観察とその描写があるからこそ、読み終えた頃にはおにぎりが食べたくなるほど読み手を引き込むパワーがある。

  • 装丁

ハードカバー

  • 特徴

ホカホカ炊きたてのお米からおにぎりを作る手順でストーリーが展開していく。

  • 1ページの文字量

10〜20文字程度

  • 音読目安

1分くらい

  • ムスメに読んでいた時期

1歳〜2歳

  • ムスメ好き度(星5中)

★★★★★

  • 母好き度(星5中)

★★★★★
ーーー
工程を見ながら一緒に手真似?(って言うのかな?)をしながら音読するのが我が家スタイル。
娘も楽しいようで、今ではソラでセリフを言いながら手真似をしてる。

ただリアルなだけではなくて、本当に絵なのかと思うほどのシズル感で、炊きたてのお米の香りが漂ってきそうな雰囲気。
読んでると娘は「食べていい?いいかなぁ?」とページをめくる度に聞いてくる。わかる、わかるよ、その気持ち!

結構古い発刊で、描かれている炊飯器なども昭和の香りが漂っていて、そんな雰囲気もまた「おにぎり」という題材とマッチして、母はノスタルジーを感じずにはいられない。

そんなところも含めてとてもお気に入りな絵本の一冊。
あまりに母、娘共に好きすぎて友人のプレゼントとしても何度か選んだ。

008:不思議な世界観だけどクセになる「もこ もこもこ」

もこもこもこ (ぽっぽライブラリ みるみる絵本)

もこもこもこ (ぽっぽライブラリ みるみる絵本)

何もないところからはじまり、ページをめくるごとに不思議な物体が生まれ、消えていくというとても不思議な世界観の絵本。

ーーー

  • 世界観・雰囲気

グラデーションカラーの背景が移り変わっていく中で、生まれた物体(といっても、ただの丸や三角などの図形)がページをめくるごとに姿を変えたり、新たなものが生まれたりする。使われている色や、空間の作り方、効果音だけのテキストがこれまた不思議な雰囲気を増長させているけど、繰り返し読んでいるとクセになってくる。

  • 装丁

ハードカバー本

  • 特徴

絵本サイズが大判で、子が幼い頃は割とページをバサバサとめくりながら読むのは大変だったけど、少し大きくなった今は、大判だからこその迫力でとても良い。文が効果音だけなので、子も覚えやすいらしく、今では一緒に音読する。

  • 1ページの文字量

5〜10文字程度

  • 音読目安

1分くらい

  • ムスメに読んでいた時期

0歳〜2歳

  • ムスメ好き度(星5中)

★★★

  • 母好き度(星5中)

★★★★
ーーー
シーン…としている中に突然「もこ」と丸い物体が生まれるところから始まり、大きくなったり、ほかの物体が生まれたりして、消えていく流れが展開されているが、一番最後のページでは最初のページ同様、何もなくなったシーンとした世界にまた1つ「もこ」と丸い物体が発生したところで終わる。
この終わり方がなんとも秀逸。
最後に当たるまでに物体が発生して育ち、形を変えて、消えていくということを経ているので、最後に生まれたこの「もこ」は、これからどうなるんだろう!?と、その後の想像を描かせる。
ややクセのあるグラデーションの色使いや、これまたやや不安を煽る空間の使い方などが世界観に没頭させ、ストーリーも最後に心に残すものがある。
心にひっかかりを持たせるものは振れ幅が標準ではないものであるため、おそらくこれらの少しの違和感やクセが、また見たくなる要因なのではと思う。

ちなみにいつまでも謎だけど、絵本の表紙を見ると「もこ もこもこ(ひとつめの「もこ」とふたつめの「もこ」の間にスペースがある)」に見えるけど、Amazonとかでみると一続きで書かれてる。
本当はどっちなんだろうなーと。
もちろん、どっちでもいいんだけど、音読してるとリズムとか、間の取り方に迷うので…笑

007:仲良しわんこ兄弟が微笑ましい「おやすみ」

おやすみ

おやすみ

「おはよう」と対になるシリーズ…という位置付けなのかどうなのかは不明だけど、中川さん×山脇さんコンビで「おはよう」と同出版社、同体裁の「おやすみ」。
でもこっちの主人公は太陽ではなく、2匹の兄弟わんこたち。
ーーー

  • - 世界観・雰囲気

可愛いらしい兄弟のわんこが山脇さんならではのイラストで描かれている。優しい世界。柔らかな色合いとタッチだけど、そんな世界でも泥だらけになったり、お風呂で泡で遊んだりとのびのびしている。

  • 装丁

ハードカバー。中は普通。

  • 特徴

「おはよう」が、起きてから目覚めるまでの行動を「●●しましょう」と繰り返していく流れに対し、「おやすみ」は、昼間から寝るまでの間の出来事で、日中たくさん楽しむ様子から始まり、段々と寝るための準備を整えて、読んでいるほうも眠りに誘われていくように話が進み、最後は「おやすみ」で締められる。ストーリーの展開や、ページごとの文はシンプルだけど、とても心地よい作品。

  • 1ページの文字量

10〜20文字程度(amzon内の画像参照)

  • 音読目安

1〜2分程度

  • ムスメに読んでいた時期

1歳〜2歳

  • ムスメ好き度(星5中)

★★★★★

  • 母好き度(星5中)

★★★★★
ーーー
うちは娘も母もこの本が大好き。
娘は「おはよう」よりも「おやすみ」を読んで欲しがる。

わんぱくなわんこ兄弟が可愛い。
ストーリーもシンプルだけど展開のさせ方が秀逸。
「おはよう」でも書いたけど、山脇さんの描くパジャマが見れる。

ストーリーの締めの言葉が「おやすみ」なので、最後のページは娘も一緒に「「おやすみ」」と音読してる。

006:擬人化太陽の朝「おはよう」

おはよう

おはよう

  • 作者: 中川李枝子,山脇百合子
  • 出版社/メーカー: グランまま社
  • 発売日: 1986/05
超有名絵本「ぐりとぐら」でお馴染みの中川さんと山脇さんコンビの赤ちゃん向け絵本。
地区で開催された「子供の絵本の与え方」みたいなお話会で講師の方がオススメする本に入っていたことで知って購入。

ーーー

  • 世界観・雰囲気
    山脇さんならではのイラストのタッチはそのままだけど、主人公は擬人化された元気いっぱいな太陽。愛らしさや優しさというよりは、元気!な感じ
  • 装丁
    ハードカバー。中は普通。
  • 特徴
  • この太陽自身が朝起きて目が醒めるまでが短い文章でテンポよく語られるストーリー型。生活習慣なども押し付けなく折り混ぜられている。
  • 1ページの文字量
  • 10文字程度(amzon内の画像参照)
  • 音読目安
  • 1〜2分程度
  • ムスメに読んでいた時期
  • 0歳〜1歳未満
  • ムスメ好き度(星5中)
  • ★★★★
  • 母好き度(星5中)
  • ★★★
ーーー
詳細はまた改めてコラム的に書ければと思うけど、絵本を選んでる私、母は「説教くさい」とか「押し付けがましい」本が好きじゃない。(さらにそこに「怖がらせて」というのが加わると視界にすら入らない)
この「おはよう」では、朝起きてから目が醒めるまでの一連の流れがストーリーになっているが、それをする必然性が語られたり、「やろうね!」と強要しているわけではないところが気に入ってる。
あくまで「●●をします」のように、ストーリーの中の出来事の1つとしてでも、それをするのだな、という現実の出来事としてでも捉えやすく、とても絶妙なバランスだなと。
 
あと、この本の中で太陽がパジャマを着て出てくる。
山脇さんが描くパジャマはいろんな絵本で見かけるけど、あくまで普通の、よくあるパジャマなんだけど、本当に安らかに眠るために纏われているような雰囲気を感じて見ているこちらもとても安らぐ。(その周辺に描かれる小物の効果ももちろんあるけど)
起き抜けの場面だと「ぐっすり良く寝たんだね〜」って思うし、これから寝る場面だと「あぁ、眠くて眠くて仕方ないね〜」という印象をすごく受ける。
こういうところが山脇さんの描くキャラクターの個性を育てる世界観の描き方だなぁと思う。
好き。すごく。